« 2011年4月 | トップページ | 2011年8月 »

2011年7月

2011年7月31日 (日)

大阪技術振興協会誌8月号「人は放射線に弱いのか(その1)」を投稿

6月末に原稿を提出していた投稿が8月号に掲載された。とても1回では言い足りず,次号でも連続掲載していただくことになっている。IntPE

福島第一原子力発電所事故により「放射線」や「エネルギー選択問題」の情報が氾濫している。が,議論はされても「不毛」かつ「未整理」。根拠を示さない「売らんかな」の報道や出版を見過ごすことは「技術士」にはとても辛い。かくして細やかな発信から始めることを決心する。

1.地球創生とウラン資源

まずは「放射線」の話から。人は本当に放射線に弱いのか・・歴史的に考えてみる。宇宙は,「ビックバン→量子や元素(水素,ヘリウム等軽元素,鉄までの重元素)の生成→超新星爆発→ウラン等より重元素の生成→太陽(核融合)/地球(ウランによる核分裂等)」の流れで誕生したと言われる。天から太陽光(核融合)や宇宙線が降り注ぎ,地からはウランの崩壊熱等による地熱が湧き上がる,そんな地球の物質から人は生まれた。人の環境は「放射性物質」や「放射線」に満ちており,人自身も「放射性物質」を含んでいる。核分裂や核融合の利用も,ただ「自然に学び,自然を真似ている」に過ぎないとも言える。

上述の「地球(ウランによる核分裂等)」は,①太古に天然の原子炉があったこと,②地熱源が主にウランの崩壊熱であるらしいことをさす。現在の天然ウランは,軽水炉で35%に濃縮して用いる核分裂性のウラン235(存在比:0.72%,半減期7.0億年)とほとんどを占めるウラン238(存在比:99.275%,半減期44.7億年)からなるが,逆算すると,20億年前のウラン235の割合は,軽水炉と同じ約3.7%となる。その頃に天然の原子炉があったという痕跡が1972年にオクロで発見され,その運転期間は,6080万年と推定されている。それが①である。もし20世紀に核分裂を発見できず,ウラン235の割合がもっと低くなってから発見されたら,人は核分裂という莫大なエネルギー源を利用できなかったかもしれない。そのギリギリの時に発見されたという「運命」を「原子力」には感じる。

もう一つの②。地球誕生から約46億年。地球内部はなぜ高温なのであろうか。地表に降り注ぐ太陽エネルギーだけでは,説明はできない。地殻中には,地球誕生時からの「原始放射性物質」が存在する。例えば,ウラン238(半減期44.7億年,土壌中の約3ppm)やトリウム232(半減期141億年)。これらと娘核種(崩壊によって生成する核種)の崩壊熱を加えると,地球全体の地熱(約4×1010kW)の約半分になるというから,地熱の源は主に放射性物質によるものである。この地熱は,地下のマグマを流動させて地磁気を発生させ,それにより宇宙線を減らして人に貢献している反面,プレートを移動させて人に害をもたらす大地震の源にもなっている。

2.過酷な地球環境のもとで人類は祖先から何を引き継ぎ,順応してきたか

さて,本題に移ろう。地球上の生物誕生の歴史は「30数億年前:海中に嫌気性細菌(生物の元祖,酸素は猛毒)が誕生(環境:今より数千倍強い紫外線/原始大気に酸素なし)→光化学細菌が浅海に誕生→好気性・光化学生物に進化→約20億年前:大気中に酸素出現(酸素を代謝活性に利用する能力の獲得/大気上層に紫外線の作用でオゾン発生→紫外線吸収)→約15億年前:現在の多細胞生物の誕生(紫外線障害修復遺伝子を獲得)→約5億年前:植物上陸→恐竜の絶滅→6500万年前:哺乳類先祖の誕生→寒冷化/森林退行により類人猿はサバンナヘ→数百万年前:ヒトが類人猿から誕生→ヒトは紫外線障害除去能力を向上」となる。現存生物の祖先は「太古にuvrA遺伝子を獲得して,紫外線の嵐の中で勇ましく生活していた」のである。例えば,NHKスペシャル「病の起源」(人間の進化の歴史と最新研究の成果から迫った)シリーズの「骨と皮膚の病」。約600万年前,チンパンジーと共通の祖先から分かれた人類は独自の進化を遂げた。森を出て強い太陽光のサバンナを生き抜くために,人類は全身を覆っていた体毛を失い,紫外線の害(ガン)から身を守るメラニン色素の褐色の肌を手に入れた。そして約600万年前,誕生の地アフリカから出た褐色肌の人類は,高緯度地域へ移動するに従って,紫外線を遮り過ぎて骨の形成に不可欠なビタミンD(紫外線により体内でつくられる)が不足すると,今度はメラニンの量を減らす(肌を透明にする)ことで,環境順応を果たしてきた。このように,人は,修復能力を超えた放射線には耐えられないが,環境順応してきた「原始放射性物質」(カリウム40を含む)の放射線には強く作られているのではないか。人体からのカリウム40の排出時間にも,それが現れているようにも思う。

3.放射線を正しく理解するために

  我々は,放射線の環境下で生きている。放射線の人体への影響は,放射線の種類や人体組織ごとに違うだけでなく,人体からの排出時間や年令等をも考慮する必要があり,単純ではない。日本人は,これまで「放射線」を学校で教育されてこなかった。が,もう知らないではすまなくなっている。その上,今後は「エネルギー選択」を厳しく迫られる。その時,「放射線」を正しく理解することは重要であり,ここでは、その第一歩を踏み出したに過ぎない。さらに,人の幸せにとってエネルギーとは何かから発して,「エネルギー問題」にも課題は多い。それらは,今後としたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

京都技術士会例会 エネルギー資源講演

7月16日(土),機械システム部会に引き続き「原子力とエネルギー資源を考える」と題して講演。「放射線」については、当日別の講演者が発表する予定であったため,資料から除いた。参加者は69名。今回は,講演後すぐに退席したため,懇親会で参加者の意見を聞くことはできなかった。IntPE

| | コメント (0) | トラックバック (0)

日本技術士会近畿支部 エネルギー資源講演

7月9日(土)機械システム部会で、「放射線の人間への影響と今後のエネルギー選択」と題して講演を行った。参加者44名、会場は満席。講演概要(予稿)は次のとおり。福島第一発電所事故を踏まえて、日本中がバイアスのかかった今、「原子力」「放射線」及び「エネルギー資源」の原点は何なのかを考えてみたいということで、この数か月調べたことを報告した。IntPE

2年前、「環境・エネルギー問題と原子力の役割」と題して講演させていただいたが、今ほど、その議論が必要な時期はない。本年3月の東日本大震災により福島第一原子力発電所事故が発生した結果、1~4号機の廃炉が決定し、7、8号機の増設計画が中止になる等、今後の原子力発電所の新設の実現が不透明になっている。加えて、報道機関や政治家は大衆迎合気味であり、誤った情報や根拠を示さないままの議論で右往左往している。今後も、熟慮のないまま、迫られた末に短絡した意思決定に陥る危険性があるのではと心配する。我々も然り。

「原子力安全」については、専門家が情報を確認し分析した上で出す見解を待って、我々が判断しても遅くはなかろう。いや、住民避難の長期化を防ぐための「放射能汚染物質対策」(法整備を含む)を除いては、むしろそうするのが賢明である。我々には、今、すべきことがある。エネルギー戦略の転換には長いリードタイムが必要である。今、我々に必要なのは、今夏からに差し迫ったエネルギー需要の節約/調整方法や、今後必要なエネルギー資源の量と質をどの方式で賄うか(エネルギー選択)、を真剣に検討し、確信をもって、次の選挙等で選択することではないか。福島第一原子力発電所事故で何があったかについては、現在、整理されないままの情報が氾濫し、食傷気味であろう。この講演では、日本原子力学会の521日「緊急シンポジウム」の情報程度に留め、報道等の繰り返しはしない。報道等では言わない/分からない、できるだけ根本のところに焦点を当てて、少しでも双方向の議論の場になればと願う。例えば、「放射線が出ているのは原子力発電所だけ」と思っている人には、火力発電所、自動車や人間自身からも放射性物質が出ている話を、「自然放射線はいいけど、人工の放射線は少しでも駄目」という人には、太古に天然の原子炉があったという話をするので、「先入観」を軽く打破していただきたい。「そもそも人間は放射線に強くできているのか」という人には、人類は進化の過程で肌の色を変化させることによって皮膚ガン発生を低下させてきたという歴史を、「再臨界騒動」の背景にある「そもそも再臨界って何?」という人には、「臨界制御」の内容を、説明したい。

そして最後には「エネルギー選択」の話。この話って、各々のエネルギー方式の支持者が、自説に都合の良い判断基準や偏った情報を元に、自分勝手な説明をしていて、互いに議論がかみ合っていない。方式を比較するためには共通するモノサシが必要だが、それって何だろうか。火力発電所を復活するったって環境問題はどうなるの。「温暖化で海面が上昇するのが問題」と思っている人には、「高い所にある縄文時代の貝塚って海面上昇の跡なのでは」と問う。「最後は、太陽エネルギーと同じ核融合が本命」って人には、「そこへのロードマップでどんな技術が必要?」って問いかける。「エネルギー選択」のベストミックスってどうあるべきか。筆者は結論に達していないが、茫洋とした中で「エネルギー選択」のための全体像を一考してみたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年4月 | トップページ | 2011年8月 »