技術一般

2012年1月 5日 (木)

水素エネルギー協会(HESS)誌が届く

平成23年12月31日付け発行の協会誌『水素エネルギーシステム』Vol.36, No.4(2011)が、年末に手元に届いた。「エネルギーを俯瞰的に捉えるとは」(2011/11/13ブログ記事参照)という「市民の立場からの投稿」が掲載されたものであるが、「技術士事務所PMPE代表」という肩書で初めて執筆した、私としては記念すべきものとなった。

私の投稿は「論文」ではなかったが、かなり明確な事前チェック(用語の統一、意味不明など)があり、協会なりの編集方針が感じられた(好感が持てた)。中間での推敲の他、最終原稿への確認依頼があったが、遺憾ながら、この段階でも、当方の責による誤記が少しあった。世に出すものは十分に推敲しておくべきであることを肝に銘じた。

本稿の中の『エネルギー問題をめぐる「正義」とは』では、「パワー・ハングリー」(ロバート・ブランス著、英治出版)の訳者である古舘恒介氏の主張の影響を受けた(新たな開眼があった)。エネルギー論にも、自分なりの「正義」(枝葉でなく幹の部分)を明確にしないと、本当のところは理解して貰えないとも考えた。今後、新たな「広がり」を模索したい。IntPE

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2011年12月28日 (水)

学生とシニアの対話「対話in関西2011」に参加

2011/12/10 10:30~17:00 大阪大学吹田キャンパス、テクノアライアンス棟で開催された「対話」(日本原子力学会 学生連絡会/シニアネットワーク連絡会共催)に参加した。この対話は、事前に「往復書簡」で行われた議論を、更に深耕する目的で行われた。学生16名(学部生7名、院生9名)、シニア15名、オブザーバ1名が参加した。

対話は、原子力安全班A/B、エネルギー政策班A/B、燃料サイクル班の計6班に分かれて行われた。

(エネルギー政策B班)グループ構成が少人数で学生とシニアが同数(各3名)であり、かつ「往復書簡」による事前対話がされていたという効果が、グループ対話で現れた。「往復書簡」という事前運動がなく、グループのシニアが1~2名という従来の対話では、情報交換の域を出ることが難しかったが、今回は、学生の様子を見ながらも「はじめに」を飛ばして「私見」の域までお話しした。1950年代に少なくなかった「停電」の幼児実体験を礎として、国家観の一つとしてエネルギーを論ずる等、普段意識していない発言をしたりして、自分でも驚く場面があった。自分の他にシニアが2名という安心感があったためと思われる。学生諸氏は、あの手の「私見」も含めてシニアはここまで考えているのか、と深読みしてしまうかもしれないことが気になるが、私にとっては「新発見」であり、こういう機会が与えられたことに感謝したい。ほとんど感想文には出ないが、懇親会は貴重である。私は自称「写真班」として、懇親会の模様を数多く撮影しながら、学生諸氏が誰とどんな話をされているかを観察した。一人のシニアとじっくり話す人、いろんなシニアを熱心に渡り歩く人、いろいろであったが、撮影された写真を見てハッと気づいたことがある。学生とシニアの諸氏は、「使命を達成した」と言おうか、なんとも言えないイイ顔をされている。特にシニアの顔には、「満足感」を超越して「DNAに刷り込まれた伝承を果たした」という安堵感が伺えた。学生諸氏は、あのイイ顔で4050年後には、シニアを超える成果をなさねば国家が成り立たないことを感じてくれたであろう。期待したい。IntPE

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学生とシニアの対話「対話in福井大2011」に参加

2011/11/26 12:30~17:00 日本原子力学会 学生連絡会/シニアネットワーク共催で、福井大学 総合研究棟Ⅰで開催された「対話」に参加した。この対話は、原子力と環境の共存について認識を新たにすることを目的としたものである。学生26名(学部生17名、院生9名)、シニア10名、アブザーバ2名が参加した。

基調講演は「福島震災を踏まえたエネルギー資源選択の課題」。対話テーマは「①福島第一原発事故を教訓に事後対策」、「②今後の原子力防災のあり方」、「③これからの原子力政策」、「④世界の原子力事情」「⑤原子力と地域共生」「⑥これから学生が出来ること」で、6グループに分かれて対話した。

1グループ(テーマ:これからの原子力政策)の討議は、まず放射線やエネルギーに対する基礎的な知識を確認してから、原子力政策を議論することになった。最初の放射線の人体への影響については、癌がなぜ増えたか(修復能力の低い老人が増えたから)、放射線が癌の原因か(原因である活性酸素をつくるのは、放射線より煙草やストレスなど他の要因が大きい。微量の放射線は人体に好影響)、癌はいつできるのか(毎日できるが、免疫が癌を殺す)などを、次のエネルギーについては、エネルギーの質(歴史はエネルギー密度の高い方向に移行)や、地熱の源は原始放射線物質の崩壊である等の由来を地球内と地球外(太陽の核融合)に分けて議論した。これらを踏まえて、今後の原子力エネルギーの進むべき方向(高速炉燃料サイクル→核融合)とロードマップを明確にして技術開発を行うべきとの認識に至った。それらの質疑と認識は、学生が整理し、分かり易く発表したが、最後の「自分ならこう考える!こうする」では、まず基礎的な知識を身につけたり、教育したりすることの大切さを強く認識したことがうかがえた。

最初に、かなりの時間を使って、放射線やエネルギーの基礎的な知識をみんなで議論したことが、「原子力エネルギーの確かさ」を再確認する結果となり、かえって原子力政策の理解には奏功した。放射線の専門家である清水彰直様から、要領よく分かり易く説明いただいた効果が大きかったものと思う。私自身も大変勉強になった。今回は、①放射線の基礎知識、②そもそもエネルギーとは、を認識した上で、③原子力政策の議論をしたせいか、所要時間は①>②>③となり、③の時間が少なくなった。が、①と②をしっかり行うことで、今後③を検討する上での「基礎固め」ができたものと思う。学生との対話の進め方としては、個々の学生の疑問に直接答えていくやり方の他に、今回のように「基礎固め」に重点を置いて、その場で無理に結論に導こうとせず、その後の展開はある程度学生に任せるというやり方も効果的なのかもしれないと思った。いろんなやり方を試みるという意味でも、今後もできるだけ各地の学生との対話に参加したいと思っている。IntPE

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2011年11月13日 (日)

エネルギー問題を俯瞰的に捉えるとは

依頼されて、こんなタイトルで「水素エネルギー協会誌」に投稿した。H23年12月号(第36巻第4号)に掲載されると聞く。

「理論的に見れば理想的なシステム」と各々の専門家は見ている「水素エネルギー」と「原子力エネルギー」を例に、「理論的に見れば」と「理想的な」について、俯瞰的視点から「そもそも論」を考えてみたものである。投稿では、「文明の基盤を担うエネルギー問題の解決には、科学技術の知識だけでなく、人文・社会科学が蓄積した視点や考察を含めて俯瞰的に捉えることが必要である」ことをソフトに述べただけであるが、もっと露骨に言えば(もちろん、そういう言い方はしていないが)、いわゆる技術系(技術者、科学者)と文科系(政治家、文化人、報道機関)が、狭い了見で、各々の「部分最適」をますます確信してばく進しあって「全体最適」からますます遠いところで、遠吠しあっている、そんな「専門バカ」の烏合の衆たる現在の全体像を揶揄しているのである。

エネルギー問題は、ある専門的な知見からだけでなく、人類に共通で究極の「人間の幸せ」という基盤からも論じられねばならない。IntPE

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なぜ講演し、投稿するのか

今年は、講演3件、投稿4件を行った/行う予定である。講演は、日本技術士会2件、京都技術士会1件であり、投稿は大阪技術振興協会誌3件、水素エネルギー協会1件である。昨年までは、年1回程度(日本技術士会、日本PE協会)であったから、3.11東日本大震災の衝撃が、ここにも現れている。

さて、なぜ講演し、投稿するのか。

吉田拓郎の楽曲の歌詞にこんなのがある。『♪・・やっと一人になれたからって、涙がでたんじゃ、困るのさ♪・・やっぱり僕は人に揉まれて、皆んなの中で生きるのさ♪』 端的に言って「人間の性(さが)」というか、人間が「社会的動物」であることの証明というか・・・そういうものなのであろう。(下記URL参照)

社会に影響を与え、その社会から影響を受けて成長する・・・ってことさ (・・って、粋がってみる 笑)。IntPE

http://www.youtube.com/watch?v=ZcJDZxnxJ8s

http://www.youtube.com/watch?v=W8Xual6RQKc&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=ImpfIcP1Bqc

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学生とシニアの対話「対話in九州2011」に参加

2011/11/11 13:30~17:30 九州大学伊都キャンパスで開催された「対話」に参加した。この対話は、環境・エネルギー問題や原子力について理解し、これらの問題にどう望むべきかを学生/学会参加シニアが一緒になって考えることを目的としたものである。

基調講演は「東電福島事故と環境修復」、対話テーマは「今後のエネルギー政策」「原子力発電と代替エネルギー」「汚染地域の今後」「事故で発生した放射性物質の処理、処分」や「事故の原因と今後の対策」。学生20名、シニア11名が参加した。

自ら参加し、自分の意見を持つとともに、他人の意見を尊重する姿勢が学生に見られたのは素晴らしかった。学生との対話に初めて参加したが、日本の将来に確かな希望が持てると感じた。有意義な半日であった。今後も極力参加したいものである。IntPE

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2011年8月17日 (水)

大阪技術振興協会誌9月号「人は放射線に弱いのか(その2)」を投稿

8月号に引き続き,大阪技術振興協会誌9月号に「人は放射線に弱いのか(その2)」を投稿した。「放射線」の話というより,「エネルギーの正体」や「今後のエネルギー選択のモノサシ」について書きたかったのであるが,うまく表現されていないと感じる。(その3)の予定はないが,何等かの形で引き続き発信していきたい。知らないまま「大きな過ち」を犯すこと,それは「大罪」ではない・・・と言えようか。IntPE

前報〔人は放射線に弱いのか(その1)〕では,我々の環境がなぜ放射線に満ちているのかを,地球の成り立ちから述べた。ビッグバンや超新星爆発の膨大なエネルギーを「質量」という形で蓄積した「原始放射性物質」は,現在でも放射線や崩壊熱を出し続けている。「放射線という言葉は,おそらく最も誤解されている言葉の一つである。放射線は地球誕生の太古より存在している自然の一部であると科学者や技術者は認識しているが,多くの人々にとって放射線とは,近年の原子力時代がもたらした,20世紀の新しい力を象徴するものと思われていることが多い。」(アラン・E・ウォルター著,放射線と現代社会)

1.放射線を正しく理解するための第一歩とは             福島第一原子力発電所事故は,「放射線」の情報を一挙に氾濫させた。そもそも論から頭の整理が必要ではなかろうか。放射線とは,平たくいえば単に空間を移動するエネルギーである。放射線は高エネルギーの電磁波(光子)と粒子線に大別されるが,前者をエネルギー(周波数)の低いものから並べると,電波,マイクロ波,赤外線,可視光,紫外線そして電離放射線(X線,γ線,宇宙線)である。「放射線は見えないから怖い」とは言い訳に過ぎない。太陽光という放射線は生物にとって不可欠なものである。負の影響もある。前報では,人が紫外線のガンから身を守るためにメラニン色素の調節能力を獲得した歴史を述べた。最近,WHOが「携帯電話(電磁波)は2,000mSv/h以上の放射線や喫煙程度に脳腫瘍の発生確率を高める」と発表した。エネルギーの高低で人への影響度は異なるが,頭に接触させた電磁波源が脳腫瘍に影響するかもしれないことは,他の放射線(電磁波)の影響からも容易に類推できるはず。こんなことを見過ごさないだけの理解が必要である。とはいえ,大量の電気を必要とする施設を日本から電気代の安い(日本の1/3)韓国へ移し,日本では全量買い取りで投資リスクが低下することを見越して,「脱原子力」を喧伝して再生エネルギービジネスを開始した携帯電話会社の社長がいても,疑問にも思わない。むしろ,35道府県がこれに協力し,「太陽光コストは火力の3倍。国民負担増になる」と疑問を提示したのは1県のみ。これが,我が日本国の現実なのである。「電波は見えないから」と言っていられようか。

2.原子力エネルギーとは             放射線を正しく理解するには,発生源である「放射性物質」や「原子力」の基本的理解が欠かせない。前報で述べたように,宇宙のビッグバンや超新星爆発の膨大なエネルギーは,ウランまでの元素に「質量」の形で蓄えられた。「核分裂」や「核融合」は,平たくいえば蓄えた「質量」から膨大なエネルギーを取り出すことであり,化学反応でエネルギーを取り出す化石燃料とは,エネルギー密度の点で雲泥の差がある。その分,本質的に危険を伴うものなのである。それを人知の及ぶ範囲と判断するか否かが分かれ道である。人の幸せとは何か。本当のところは分からないが,それは文明や文化が滅亡しないことを前提としているように思う。火というエネルギーを発見した人は,他の動物に比べ優位な進歩を遂げたが,古代ギリシャなどの文明は森林の乱伐と,それによる洪水や伝染病などで滅亡したという。地下に埋蔵された化石燃料を利用できない時代には,木材や木炭の調達可否により文明が盛衰したが,森林乱伐を救ったのは,よりエネルギー密度の高い石炭の登場であった。ここで初めて人は,「過去の太陽エネルギーを蓄えた資源」に手をつけたが,これが「産業革命」への起爆剤となった。その後,放射能を発見し原子力発電を開始したのは,今から約100年前と40数年前でしかないが,この利用で,エネルギー密度や入力に対する出力エネルギーの比(エネルギー収支比:EPR)が飛躍的に高まった。1970年代のオイルショック狂乱の再現を食い止めたのは,原子力発電ではなかったろうか。まさに,エネルギーは文化/GDPであった。

3.エネルギー選択のモノサシを考える            噛み合わない議論を整列する「エネルギー選択のモノサシ」は何であるべきか。モノサシを3点〔(1)~(3)〕,留意点を2点〔(4),(5)〕提案したい。 (1)経済性と実現工程を第一関門とする・・①EPRとエネルギー密度が高い,②稼働率が高い,③費用低減(負債回収)年数が短い,④リードタイムを考慮した長期戦略がある(原子力) (2)将来性(波及効果)の高い技術である・・戦略のリードタイムは長いので,将来の有望技術の開発ロードマップへの波及効果を考慮する必要がある。原子力の場合は,核融合と高速炉への波及であろう。 (3)安全性は便益との均衡で判断する・・携帯電話の使用(便益)はガン発生率(安全性)を,喫煙は健康(ガン発生率)を考慮して判断するように,他も基本的に同様であろう。 (4)地球温暖化対策は次善の条件とする・・過去の太陽エネルギーを蓄えた資源(化石燃料)は将来の世代に残すべきである。が,技術的に未決着の説(CO2主犯説は疑問)に基づく「政治的判断」は最優先条件にする必要がなかろう。 (5)海外事例は国情の違いを考慮して参考とする・・資源の有無,周辺国との協調の可否などの違いを無視した「見境のない適用」には慎重であるべき。例えば,今般の政策転換後のドイツで輸入電力量が増加した。その理由は「外国の安い電力が流れ込んだせいであり,発電能力が不足しているからではない」(独政府)。EUは2015年までに域内の電力市場を単一化し結節点を増やす計画という(日経ビジネス)が,その時,周辺国からの安い原子力発電の電力の流入を禁止することが,独政府にできようか。停電率の低さのメリットも失われ,企業は周辺国に移転して同じ電力を安く買えば良いはず。背景や根拠数値をよく確認し,良い所どりの論にも注意する必要があろう。

4.さいごに         報道や政治は大衆迎合気味であり,根拠数値を示さない議論も多い中,熟慮のないまま,迫られた末に短絡した意思決定をしてしまう危険性が高まっている。焦る気持ちから急ぎ「選択のモノサシ」などを述べたが,「エネルギー選択」のベストミックスとは何であろうか。迷いの日々であるが,決断を迫られる日は近い。以上

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2011年7月31日 (日)

大阪技術振興協会誌8月号「人は放射線に弱いのか(その1)」を投稿

6月末に原稿を提出していた投稿が8月号に掲載された。とても1回では言い足りず,次号でも連続掲載していただくことになっている。IntPE

福島第一原子力発電所事故により「放射線」や「エネルギー選択問題」の情報が氾濫している。が,議論はされても「不毛」かつ「未整理」。根拠を示さない「売らんかな」の報道や出版を見過ごすことは「技術士」にはとても辛い。かくして細やかな発信から始めることを決心する。

1.地球創生とウラン資源

まずは「放射線」の話から。人は本当に放射線に弱いのか・・歴史的に考えてみる。宇宙は,「ビックバン→量子や元素(水素,ヘリウム等軽元素,鉄までの重元素)の生成→超新星爆発→ウラン等より重元素の生成→太陽(核融合)/地球(ウランによる核分裂等)」の流れで誕生したと言われる。天から太陽光(核融合)や宇宙線が降り注ぎ,地からはウランの崩壊熱等による地熱が湧き上がる,そんな地球の物質から人は生まれた。人の環境は「放射性物質」や「放射線」に満ちており,人自身も「放射性物質」を含んでいる。核分裂や核融合の利用も,ただ「自然に学び,自然を真似ている」に過ぎないとも言える。

上述の「地球(ウランによる核分裂等)」は,①太古に天然の原子炉があったこと,②地熱源が主にウランの崩壊熱であるらしいことをさす。現在の天然ウランは,軽水炉で35%に濃縮して用いる核分裂性のウラン235(存在比:0.72%,半減期7.0億年)とほとんどを占めるウラン238(存在比:99.275%,半減期44.7億年)からなるが,逆算すると,20億年前のウラン235の割合は,軽水炉と同じ約3.7%となる。その頃に天然の原子炉があったという痕跡が1972年にオクロで発見され,その運転期間は,6080万年と推定されている。それが①である。もし20世紀に核分裂を発見できず,ウラン235の割合がもっと低くなってから発見されたら,人は核分裂という莫大なエネルギー源を利用できなかったかもしれない。そのギリギリの時に発見されたという「運命」を「原子力」には感じる。

もう一つの②。地球誕生から約46億年。地球内部はなぜ高温なのであろうか。地表に降り注ぐ太陽エネルギーだけでは,説明はできない。地殻中には,地球誕生時からの「原始放射性物質」が存在する。例えば,ウラン238(半減期44.7億年,土壌中の約3ppm)やトリウム232(半減期141億年)。これらと娘核種(崩壊によって生成する核種)の崩壊熱を加えると,地球全体の地熱(約4×1010kW)の約半分になるというから,地熱の源は主に放射性物質によるものである。この地熱は,地下のマグマを流動させて地磁気を発生させ,それにより宇宙線を減らして人に貢献している反面,プレートを移動させて人に害をもたらす大地震の源にもなっている。

2.過酷な地球環境のもとで人類は祖先から何を引き継ぎ,順応してきたか

さて,本題に移ろう。地球上の生物誕生の歴史は「30数億年前:海中に嫌気性細菌(生物の元祖,酸素は猛毒)が誕生(環境:今より数千倍強い紫外線/原始大気に酸素なし)→光化学細菌が浅海に誕生→好気性・光化学生物に進化→約20億年前:大気中に酸素出現(酸素を代謝活性に利用する能力の獲得/大気上層に紫外線の作用でオゾン発生→紫外線吸収)→約15億年前:現在の多細胞生物の誕生(紫外線障害修復遺伝子を獲得)→約5億年前:植物上陸→恐竜の絶滅→6500万年前:哺乳類先祖の誕生→寒冷化/森林退行により類人猿はサバンナヘ→数百万年前:ヒトが類人猿から誕生→ヒトは紫外線障害除去能力を向上」となる。現存生物の祖先は「太古にuvrA遺伝子を獲得して,紫外線の嵐の中で勇ましく生活していた」のである。例えば,NHKスペシャル「病の起源」(人間の進化の歴史と最新研究の成果から迫った)シリーズの「骨と皮膚の病」。約600万年前,チンパンジーと共通の祖先から分かれた人類は独自の進化を遂げた。森を出て強い太陽光のサバンナを生き抜くために,人類は全身を覆っていた体毛を失い,紫外線の害(ガン)から身を守るメラニン色素の褐色の肌を手に入れた。そして約600万年前,誕生の地アフリカから出た褐色肌の人類は,高緯度地域へ移動するに従って,紫外線を遮り過ぎて骨の形成に不可欠なビタミンD(紫外線により体内でつくられる)が不足すると,今度はメラニンの量を減らす(肌を透明にする)ことで,環境順応を果たしてきた。このように,人は,修復能力を超えた放射線には耐えられないが,環境順応してきた「原始放射性物質」(カリウム40を含む)の放射線には強く作られているのではないか。人体からのカリウム40の排出時間にも,それが現れているようにも思う。

3.放射線を正しく理解するために

  我々は,放射線の環境下で生きている。放射線の人体への影響は,放射線の種類や人体組織ごとに違うだけでなく,人体からの排出時間や年令等をも考慮する必要があり,単純ではない。日本人は,これまで「放射線」を学校で教育されてこなかった。が,もう知らないではすまなくなっている。その上,今後は「エネルギー選択」を厳しく迫られる。その時,「放射線」を正しく理解することは重要であり,ここでは、その第一歩を踏み出したに過ぎない。さらに,人の幸せにとってエネルギーとは何かから発して,「エネルギー問題」にも課題は多い。それらは,今後としたい。

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京都技術士会例会 エネルギー資源講演

7月16日(土),機械システム部会に引き続き「原子力とエネルギー資源を考える」と題して講演。「放射線」については、当日別の講演者が発表する予定であったため,資料から除いた。参加者は69名。今回は,講演後すぐに退席したため,懇親会で参加者の意見を聞くことはできなかった。IntPE

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日本技術士会近畿支部 エネルギー資源講演

7月9日(土)機械システム部会で、「放射線の人間への影響と今後のエネルギー選択」と題して講演を行った。参加者44名、会場は満席。講演概要(予稿)は次のとおり。福島第一発電所事故を踏まえて、日本中がバイアスのかかった今、「原子力」「放射線」及び「エネルギー資源」の原点は何なのかを考えてみたいということで、この数か月調べたことを報告した。IntPE

2年前、「環境・エネルギー問題と原子力の役割」と題して講演させていただいたが、今ほど、その議論が必要な時期はない。本年3月の東日本大震災により福島第一原子力発電所事故が発生した結果、1~4号機の廃炉が決定し、7、8号機の増設計画が中止になる等、今後の原子力発電所の新設の実現が不透明になっている。加えて、報道機関や政治家は大衆迎合気味であり、誤った情報や根拠を示さないままの議論で右往左往している。今後も、熟慮のないまま、迫られた末に短絡した意思決定に陥る危険性があるのではと心配する。我々も然り。

「原子力安全」については、専門家が情報を確認し分析した上で出す見解を待って、我々が判断しても遅くはなかろう。いや、住民避難の長期化を防ぐための「放射能汚染物質対策」(法整備を含む)を除いては、むしろそうするのが賢明である。我々には、今、すべきことがある。エネルギー戦略の転換には長いリードタイムが必要である。今、我々に必要なのは、今夏からに差し迫ったエネルギー需要の節約/調整方法や、今後必要なエネルギー資源の量と質をどの方式で賄うか(エネルギー選択)、を真剣に検討し、確信をもって、次の選挙等で選択することではないか。福島第一原子力発電所事故で何があったかについては、現在、整理されないままの情報が氾濫し、食傷気味であろう。この講演では、日本原子力学会の521日「緊急シンポジウム」の情報程度に留め、報道等の繰り返しはしない。報道等では言わない/分からない、できるだけ根本のところに焦点を当てて、少しでも双方向の議論の場になればと願う。例えば、「放射線が出ているのは原子力発電所だけ」と思っている人には、火力発電所、自動車や人間自身からも放射性物質が出ている話を、「自然放射線はいいけど、人工の放射線は少しでも駄目」という人には、太古に天然の原子炉があったという話をするので、「先入観」を軽く打破していただきたい。「そもそも人間は放射線に強くできているのか」という人には、人類は進化の過程で肌の色を変化させることによって皮膚ガン発生を低下させてきたという歴史を、「再臨界騒動」の背景にある「そもそも再臨界って何?」という人には、「臨界制御」の内容を、説明したい。

そして最後には「エネルギー選択」の話。この話って、各々のエネルギー方式の支持者が、自説に都合の良い判断基準や偏った情報を元に、自分勝手な説明をしていて、互いに議論がかみ合っていない。方式を比較するためには共通するモノサシが必要だが、それって何だろうか。火力発電所を復活するったって環境問題はどうなるの。「温暖化で海面が上昇するのが問題」と思っている人には、「高い所にある縄文時代の貝塚って海面上昇の跡なのでは」と問う。「最後は、太陽エネルギーと同じ核融合が本命」って人には、「そこへのロードマップでどんな技術が必要?」って問いかける。「エネルギー選択」のベストミックスってどうあるべきか。筆者は結論に達していないが、茫洋とした中で「エネルギー選択」のための全体像を一考してみたい。

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